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YOUは何しにベルギーへ? vol.2

YOUは何しにベルギーへ? vol.2

ビオレーサーがROPPONGI EXPRESSにウエアのサポートを始めたのは2020年。国内屈指の強豪アマチュアチームがビオレーサーを使い始めて5年が経った2024年1月、ROPPONGI EXPRESS代表の高岡亮寛氏と、ビオレーサーの国内代理店であるクランノート代表の和田智裕がベルギーへ渡航、ビオレーサー本社にてフル採寸によるフルカスタムジャージを製作した。なぜわざわざベルギーまで行く必要があったのか。高岡氏と和田にインタビューを行い、その理由を聞いた。

<vol.01はこちら>

ビッグママの夜なべ

――では実際の採寸のプロセスは?

和田:まず普通のモデルを着ていただいて調整を始めたんですが、市販モデルベースだと高岡さんの要望を満たすのはなかなか難しいということになり、イネオス用のモデルをベースに採寸することにしました。

高岡:イネオスフィットのジャージを着て乗車姿勢になり、メジャーとチョークを使ってウエアに線をひいて、各部の長さ、各部の周長の調整、ファスナーの位置、フィッティング、ポケットの位置と深さを詰めていきました。そうしてフル採寸してもらって、翌日には専用のウエアが完成してました。

――たった一日で?さすが自社工場。

和田:なかなかのスピード感でしたね。今回の担当メンバーは、ビオレーサーに長年在籍している商品開発のサムと、パターン含めビオレーサー商品の心臓部を牛耳っているようなビッグママ、ウェンディという女性。彼女がプロトタイプラボでパターンから生産管理まで全て担当してくれました。あとは営業トップで元プロ選手のマシュー、縫製担当、品質管理のディックという6人態勢。普通はフル採寸モデルを一着作るのにイネオスでも一週間くらいかかるんです。でも今回は「日本から来るんだから一週間も待てないでしょ」ってビッグママが徹夜で仕上げてくれました。

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一着目では満足できず

和田:というわけで翌日に出来上がったんですが、それでも高岡さんの要求は満たせなかった。

――そうなんですか。一着目はどこが不満だったんですか?

高岡:お腹周り、首周り、背中のフィット感ですね。ウエアが自転車の空力に与える影響ってすごく大きいので、わずかなしわやたるみでも性能に影響するんです。

――機材のエアロ化が進んで久しいですが、それでも自転車全体の空力性能を支配しているのは人間ですからね。フォームの改善とウエアのエアロ化のほうがよっぽど効果が大きい。

高岡:そうです。あとは裾の微調整。裾って長くなるにつれて細くなっていきますよね。だから単純に生地をカットするだけだと切り口が綺麗な円にならずに、縫製部分で角度が付いてしまいます。そこを調整してもらいました。

和田:要望もミリ単位の変更要求なので、僕からすると「それ誤差じゃない?」ってレベルでしたが、高岡さんみたいにマージナルゲインを追求している人からするとそこが気になるんですね。このレベルになると、僕が日本で採寸して写真撮って要望まとめて本社に送って作ってもらう……では無理なんですよ。プロのパターンナーじゃないと不可能です。

――でも本国まで行ってプロのスタッフに採寸してもらってビッグママに徹夜して作ってもらって、さらにそれにダメ出しするってなかなかできないですね(笑)。僕なら遠慮して「完璧です!あざっす!」って言っちゃいそう。

和田:高岡さんは容赦ないですから(笑)。そのこだわりこそが今でも強い秘訣なんだと思います。

高岡:せっかく行ったんだから、妥協のないものを作りたかったんです。

和田:すごく細かい注文を出されるので、こっちとしても若干心配になりましたが(笑)、本社のスタッフは「大丈夫。プロ選手はみんなこれくらいの要求をしてくるから」「レムコとかもこんな感じよ」「大変なのよ、みんな細かくて」って、ビッグママが嬉しそうに喋るんですよ。選手たちの期待に応えたいという彼らの想いをひしひしと感じて、ビオレーサーの仕事をしていてよかったなと。

――ビオレーサーの社風を感じられるエピソードですね。

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――二着目も翌日にできたんですか?

高岡:そうです。二着目で完璧なものになりました。

和田:ビッグママは二日徹夜してヘロヘロになってましたけどね(笑)。それでも「タカオカは満足してる?」って最後まで心配してましたよ。最後に高岡さんからサムアップもらった時の彼女の顔をみたときは私も本当に嬉しかったですね。

高岡:ちょうど昨日、そのとき作ってもらったウエアで大磯クリテを走ったんですが、首の後ろから肩までしわ一つないんですよ。ここってしわになって浮いちゃうことがほとんどなんですが。既存のウエアとはまったく違うものになりました。もうこのウエア以外着たくないですね。

完成したジャージを着て。ビッグママの安堵の笑顔。

今回のベルギー訪問が日本市場にもたらすもの

――今回は異例の対応だったと思いますが。

和田:超異例ですね。コロナ禍でも日本市場でビオレーサーが健闘したこと、そして彼らが「日本人と一緒に仕事をすると商品・サービスの品質向上が見込める」ということを理解してくれているからだと思います。私はウザいと思われるくらいに本社に会社としての戦略の方向性や、商品の品質面、サービスの品質要求などのフィードバックを出すので。意外と当事者は自分の強みを理解してなくて、そこを引きだすお手伝いをしているだけなんですけどね。

――輸入代理店として仕入れて売るだけではないんですね。

和田:彼らが「ワダには口うるさく色々言われるけど、それに応えていれば会社としてはポジティブな方向にいく」ということを分かってくれてるんです。うちが国内のプロチームに無償提供しない理由も彼らはよく理解してくれてる。「そんなワダがタカオカをサポートするのであれば、我々も最高のものを作ってやるぜ」というノリですよ。

――国内のプロチームをサポートしない理由というのは?

和田:それも聞きますか(笑)。まぁいろいろ理由はあるんですが、他社さんが無償でサポートを行っているので、業界の発展を俯瞰的に考えると、わざわざそこで同じようなことをしてもしょうがないかなぁと。あとは商品そのものの品質を向上させるのであれば、各国のプロ選手からのフィードバックがあるので、それで十分かなぁと。天候含め欧州のレース環境は本当に厳しいですから。また機会があればお話ししますが、我々は別の側面で皆様からフィードバックが欲しくて、それなら高岡さんや実際に購入して深くお付き合いさせてもらっている国内のビオレーサーファミリーのメンバーからコンシューマー商品としての厳しいフィードバックをもらったほうがいいと考えています。

――さて、今回のこのベルギー訪問ですが、「結局、高岡さんだけの特別対応かよ」って思う人もいると思うんです。普通の人はベルギーに行っても専用ウエアを作ってもらえないでしょうし。

和田:そうですね。でも、今回のこの製作を通して、日本向け仕様の製品づくりのノウハウがビオレーサーに蓄積され、今後の製品開発に活かされることになります。今回の訪問はそれらも見越したものでもあるんです。

――日本のユーザーにとって関係のないことではないんですね。

和田:その通りです。

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