オーダーサイクルジャージのデザインの仕方 vol.2/コンセプト~色~ロゴの決定
色やデザインに関する専門家でもない限り、ウエアをゼロからデザインするのは少々ハードルが高い。何色にすればいいのか。どんな模様にすべきなのか。しかし、自分だけのデザインを作れることがオーダーサイクルジャージの一番の魅力だ。そこで、ビオレーサーに籍を置くプロのデザイナーに話を聞き、「いいデザインを作成するノウハウ」を聞いた。とはいえ、デザインや色の話を詳しくやっていると本が2冊も3冊も書けてしまうので、できるだけ簡単にまとめる。
色の組み合わせに関する補足
ビオレーサージャパンには、プロのデザイナーが2名在籍している。1人はかつて広告業界でデザイナーとして活躍した人物。自転車業界に籍を置いていたこともあり、強豪ホビーレーサーとしても活躍、自転車事情・レース事情に非常に詳しい。また、サイクリストでもある女性デザイナーもおり、女性目線でのデザインを手掛けている。ビオレーサーでオーダーサイクルジャージを作成する際には、この2人がデザイン関する相談を受け付けている。
オーダーサイクルジャージのデザインの仕方vol.1に続き、vol.2からは実際にどのようなプロセスでデザインを決めていけばいいのかを、この2人のデザイナーに聞いた。
まずvol.1でも説明した色の組み合わせについて補足。
「2色使うのであれば、定番は反対色の組み合わせ(青と黄色、赤と緑など)です。同系の色同士(青と紫、オレンジと黄色、緑と黄緑など)を組み合わせてもでもまとまりやすいですね。中途半端に違う色の組み合わせは野暮ったくなりやすいと言えます」
ここまではvol.1でも説明した“色の基本”だが、面白いのはそのセオリーから外れても「いい組み合わせ」となるケースが存在するということ。例えば
①青・赤・白
②緑・赤・白
③水色に黒・黄・赤の差し色
④赤に黄の差し色
「①はフレンチトリコロールやユニオンジャック、②はイタリアントリコロールなので、国旗のイメージに引っ張られてかっこよく見えることがあります。③はベルギーナショナルジャージの色ですね。ロードレースの世界にはナショナルジャージが存在し、その配色が国を連想させます。③は自転車競技を知っているとレムコとかワウトを思い浮かべてしまって強いイメージになります。④のような配色は色のセオリーからするとややうるさい組み合わせなんですが、自転車的には強豪国スペインを連想させるため、いいイメージになるかもしれません。ファッションやグラフィックデザイン的には『それはちょっと……』という組み合わせでも、自転車的には正解になるケースもあります」
有名すぎる色の組み合わせがすでに存在する場合は、それを使うというのも手だ。
いいデザインとは?
では、自転車用ウエアにおいて「いいデザイン」とは?
「既製品だと話が違ってくるんですが、オーダーサイクルジャージに正解はありません。『オーダーされるお客さんの正解が正解』なんです。お客さんに『いいデザインのジャージができた』と納得していただければ、それが正解。落ち着いた色味でロゴもあまり主張しないデザインを求められるお客さんもいらっしゃれば、プロチームのようなレーシーでロゴだらけのデザインがいいと言われるお客さんもいらっしゃいます」
憧れのプロチームの配色を使うのも正解。集団の中で目立つように珍しい配色にするのも正解。落ち着いた雰囲気にして「大人のチーム」を演出するのも正解。アースカラーを多用してグラベル遊びに特化させるのも正解。オーダーする人、もしくはそのジャージを着用するチームのメンバーが納得すればいいデザインということだ。
「ビオレーサージャパンには我々プロのデザイナーが在籍しており、お客さんの理想のデザインを具現化し着地させるお手伝いをしていますが、デザインの第一歩は、『どんな雰囲気のジャージにしたいか』を決めることですね」
というわけで、ジャージデザインの第一歩は、ジャージデザインのコンセプトだ。
「もう本当にざっくりとでいいんです。『落ち着いた雰囲気にしたい』とか『ド派手にいきたい』とか『あのチームのようなデザインにしたい』とか。そこはデザインのベースとなるところなので一番重要です」
次に、「チームカラーの赤を使う」、「黒~紺あたりのダーク系がいい」など、使いたい色を決める。
「コンセプトと色が決まったら、そこから『多色使いにするのか』『鮮やかで派手な赤か、シックな赤か』『袖だけ色を切り替えるのか』など、徐々に絞っていきます。『紫をベースに差し色を入れたいんですが、何色を入れればいいか分からなくて……』といった場合にはアドバイスをさせていただきます」
ロゴの著作権に注意
方向性や色が決まったら、次はロゴや柄などの細部だ。ストライプ、チェック、アーガイル、スプラッシュ、水玉模様など、柄を使う場合は?
「どんなイメージの柄を入れたいのか予め決めておいてください。複雑な柄をゼロから作るとなると、プロのデザイナーでも数日かかったりもするので対応しかねることもあります。フリー素材の柄もあるので、検索してみるといいでしょう」
ショップや会社のチームであれば、ロゴが決まっているだろうが、ゼロからロゴを作る場合は?
「イメージに合う既製のフォントを使ってロゴにする手もありますし、ラフを描いていただければそれをもとにロゴを描き起こすことも可能です。極端に横長のロゴだと、ジャージに入れたときに文字が小さくなってしまいます。チーム名が長い場合は、例えばビオレーサーが製作を担当している<Roppongi Express>のジャージように上下2段に分けるといいでしょう」
ロゴに関して注意していただきたいのは、著作権だ。
「世の中にあるロゴには著作権が付いて回るため、勝手に使うことはできません。『今乗っている愛車のブランド名をジャージに入れたい』など、メーカーロゴやキャラクターを使いたいと言われるお客さんもいらっしゃいますが、もし既存のロゴを入れる場合は許可をとってください。また、既存ロゴをもじったパロディロゴも著作権的にはNGです。線引きが難しいところではありますが、例えば有名メーカーのロゴのフォントそのままで、一文字二文字変えただけのロゴは限りなくブラックに近いと思われます。パロディジャージのご要望は結構多いですが、後々トラブルに繋がることもあるので注意してくださいね」
(vol.3に続く)