サイクルウェア最大手BIORACERの「人・モノ・コトが紡ぐサイクリングの物語」

BIORACER

ヴェイパーパッドver2.0インプレッション/空気のようなビブショーツ

ヴェイパーパッドver2.0インプレッション/空気のようなビブショーツ

ビオレーサーのハイエンドビブショーツに採用されるパッド、ヴェイパーパッドが「ver2.0」に進化した。その使用感は?前作との違いは?詳細なインプレッションをお届けする。

パッドは大事

以前、300kmとちょっとの距離を小休憩以外ノンストップで走ったことがある。かかった時間は12時間ほどだったが、途中でパッドとの摩擦で肌にひどい痛みが出てしまった。荷重が集中する座骨周辺ではなく、パッドの端と肌とが擦れて太もも付け根にひどい擦過傷ができたことが原因だった。それによって後半はがに股ペダリング(最後の最後はほとんど片脚ペダリング)を強いられ、走行後数日は自転車に乗ることができなかった。パッドの重要性を改めて認識した出来事だった。ウエアが多少バタついても空力が悪化するだけで走れはするが、パッドの出来が悪いと走ることができなくなる。死活問題だ。

かようにパッドはレーサーパンツの完成度を左右するが、多くのウエアメーカーはパッド専門メーカーの既製品を採用している。餅は餅屋というわけだが、餅屋にだって美味い不味いはある。餅屋に頼んだからと言って理想の餅が出来上がるとは限らないし、それが作ろうとしている料理に最適とは限らない。

この記事でも触れたように、ビオレーサーはパッドを自社開発している。製造こそイタリアの工場に委託しているが、パッドの開発はもちろん、耐久性・伸縮性のテストまで自社のラボで行っている。既製のパッドを買ってくるほうが簡単だろうしコストも抑えられるはずだが、自社のウエアに完璧にマッチするパッドは自社で開発しないと作れない、と考えているようだ。理想主義的なもの作りである。理想の雑煮を目指すなら、餅だって自分ちで作らなければならない。そういう話だ。

最上級ラインとなるEPIC(エピック)に採用されているのがヴェイパーパッドだが、ビオレーサーは2025年1月、新型となる「ヴェイパーパッドver2.0」を発表した。詳細はこのページを参照していただきたいが、今回はその新型パッドの使用印象記をお届けする。

 

いいパッドとは?

ヴェイパーパッドがモデルチェンジしたと聞いて、まず「余計なことをするんじゃないよ」と思った。前作の印象が非常によかったからである。「モデルチェンジのためのモデルチェンジをした結果、改悪になってしまい、慌てて旧モデルを買いあさるはめになる」という余計なお世話的モデルチェンジは、この業界少なくない。

新旧を見比べてみると、形状や厚みはほとんど変わっていないようだ。とりあえず一安心。素材は前作より通気性・速乾性・柔軟性が改善されているとのことだが、触ってみると確かにしなやかさが向上している。新型のほうが明らかにソフトで柔軟だ。また、表面の手触りも新型のほうが滑らかになっており、長時間のライドでも肌を痛めにくそうだ。目には見えないところだが、パッドの裏側が生地を傷めにくい素材になり、ビブショーツとしての耐久性もアップしているという。ビブはパッドとサドルの間に挟まれて擦れる部分が最も傷みやすいので、ユーザーとしてありがたい改良だ。

左が旧型、右が新型。形状はほぼ同じだが、柔軟性や表面の肌触りが変わっている。※パッド表面の色は生産時期により異なる場合があります。

 

パッドには、肌とパンツの摩擦を低減する、振動や衝撃を緩和するという役割があり、しかもペダリング動作を阻害しないことや、ペダリング時の安定性・通気性・速乾性・肌触り・フィット感を確保することも必要で、それらは相反しやすい。

ヴェイパーパッドver2.0、パッドそのものは比較的厚みがあるが、密度が異なる素材が一体成型されているので、実際に着用してサドルに座ると薄い層が先に潰れてくれ、それによって高いフィット感がありつつ、モコモコ感はない。前出の各要素のバランス点が非常に高いのだ。一度ペダリングを始めると、バイクを降りるまでパッドのことを意識することは全くない。これはいいパッドの証拠。

着座したときにビブの生地とパッドと肌との間で妙なズレ・歪みが生じてなんとも座り心地が安定せずライド中何度も無意識に座りなおさないといけないパッドもあるが、これは最初から最後まで存在を忘れさせるパッド。前作の長所は犠牲になっておらず、柔軟性・通気性の向上は長距離を走ったときにメリットとして感じられるのだと思う。300km走ったわけではないが、ある程度の長距離を走っても、あのときのようにパッドのどこかが肌を攻撃するようなことはなかった。

 

サイズパッドシステムの意味

これは、SPS(サイズパッドシステム)の恩恵でもあるだろう。ヴェイパーパッドは、ウエアのサイズによって大きさが変えられている。パッドまでサイズ展開するウエアメーカーはほとんどないが、ビオレーサーはヴェイパーパッドを3サイズ(プラス、プロ、スモール)用意、ウエアのサイズによって最適な大きさを組み合わせている(Sサイズ以上にはプラス、XSサイズにはプロ、XXSサイズにはスモールが装着される)。フレームやハンドルやステムはサイズ展開が当たり前だし、サドルだってサイズバリエーションが用意されるようになってきた。よくよく考えれば身長150cm台から2mオーバーまで、同じパッドに座るほうが不自然だ。

今回はEPICビブショーツ(XSサイズ)を試用したが、パッドだけでなくビブショーツとしての完成度も高い。パネル数はセンター部分と左右の3枚のみで、縫い目が少なく、各部で生地の特性が変えられており、腰回りによくフィットし着用してもシワがほとんどできない。太もも部分はハニカム織りのハニーウェーブ素材で、筋肉にコンプレッション効果をもたらすというが、履くと肌にピタリと吸い付いてくれる。

ちなみに、パッドのサイズ展開が行われるのは、この日本だけ。これは、日本のビオレーサーユーザーのみが体験できる、空気のような自然なビブショーツである。

EPIC NEW VAPOR 2.0 BIBSHORTS購入はこちらから

PAGE TOP