オーダーサイクルジャージのデザインの仕方 vol.3/自分だけの一着を作るには
色やデザインに関しての専門家でもない限り、ウエアをゼロからデザインするのは少々ハードルが高い。何色にすればいいのか。どんな模様にすべきなのか。しかし、自分だけのデザインを作れることがオーダーサイクルジャージの一番の魅力だ。そこで、ビオレーサーに籍を置くプロのデザイナーに話を聞き、「いいデザインを作成するノウハウ」を聞いた。とはいえ、デザインや色の話を詳しくやっていると本が2冊も3冊も書けてしまうので、できるだけ簡単にまとめる。
ロゴの数と位置
方向性、色や配色、柄、ロゴが決まったら、次はいよいよ本格的なデザインである。まず、ロゴの位置は?
「プロチームっぽくしたいのであれば、胸、両肩、両脇、背中にロゴを入れるのがセオリーです。ただ『全身ロゴだらけ』というイメージにもなりやすいので、シンプルでスタイリッシュにしたいというお客さんは、ロゴの数は少なめにするといいでしょう」
せっかくオーダーサイクルジャージを作るんだから、色やデザインをたくさん盛り込まないと勿体ない……という心理が働くのも分かるが、デザインは「足し算掛け算」よりも「引き算」のほうがうまくまとまりやすい。
「色数も減らしたほうがスタイリッシュに見えることが多いですね。以前、真っ黒のジャージにグレーのチームロゴが胸に小さく入るだけ、というデザインでジャージを作られた方がいらっしゃいましたが、すごくいいデザインだと思いました。また、デザインテンプレート上の身頃や袖の各パネルに、ロゴを目一杯大きく入れたがるお客様も多いのですが、それよりも80%ほどに小さくした方が、全体的に余裕が生まれ、スタイリッシュなデザインになります。ロゴの数や位置に関しては、『こんなイメージにしたい』というご要望に合わせて、こちらからご提案させていただきます」
ライディングフォームをイメージする
デザインを検討する段階は平面のテンプレート上で考えることになるが、「実際に着て自転車にまたがったときにどう見えるか」を想像することも重要だ。
「『実際に乗車した状態でどう見えるか』はサイクルジャージをデザインする上で非常に重要な視点です。直立した状態のテンプレート上でデザインしていると、面積の大きなおなか部分にロゴやデザインを入れたくなりますが、ライディングフォームをとったときに見えるのは肩や胸の上部分のみ。お腹部分って目に入りにくく、シワもよりやすいため、実際はほとんど見えません。テンプレート上でお腹部分をシンプルにしたデザインを見ると、『お腹部分がスカスカだな……』と思えるんですが、実際は違和感なく仕上がることが多いですね」
ここで一つ注意点を。
「生地の縫い目をまたぐデザインはやめたほうがいいです。オーダーサイクルジャージは、ジャージになった状態でデザインを印刷するのではなく、生地に印刷してから各パネルを縫い合わせてジャージにするので、デザインがずれてしまう可能性が高いんです。それが可能なメーカーもありますが、ビオレーサーはフィッティングと空力性能を追求しているため立体裁断になっており、どうしても柄がずれてしまいやすいんですね」
ビブはできるだけシンプルに
では、ビブのデザインは?
「ビブに関しては、最近は黒かネイビーにしてジャージのデザインを引きたてつつ、引き締めるイメージにされる方が多いですね。『パンツ部分にはあまり華美なデザインは入れない』というのがここ数年の流れです。流行ではありますが、そのほうがスマートに見えますね。個人的にはいい流れだと思います」
昔はパンツもジャージと同じデザインにする、というのが当たり前だったが……。
「ジャージに使っている色をパンツに入れることにこだわられるお客さんは多いんですが、あまりそこに固執すると逆に野暮ったくなってしまうことがあります。ジャージの脇のラインがパンツにそのまま繋がるデザインは昔の定番でしたが、現在のトレンドでいうと古臭く見えることもあるので、よく考えてみてください。かっこよくしたいのであれば、パンツは『ロゴのみを入れる』くらいシンプルなデザインに抑えるのがお勧めです」
「また、ビブショーツの裾部分にリング状にラインを入れる方も多くいらっしゃいますが、脚が短く見えやすいので注意です。欧米の選手なら実際に長いのでかっこよく見えるんですが、日本人の場合は脚が裾で分断されるような視覚になり、実際より短く見えてしまうことがあります。スタイリッシュに見せたいのであれば、パンツ部分に横向きのラインを入れないほうがいいでしょう」
プロデザイナーの存在
デザインが決まったらどのように提出すればいいのか。画像ソフトを使いこなせる人は少ないだろう。
「ホームページからデザインテンプレートがダウンロードできるので、プリントアウトして色鉛筆で手描きされてもいいですし、簡易なお絵かきソフトでPDFに書き込まれてもOKです。完璧なデザインデータは必要ありません。ラフスケッチから本番データに起こす作業はこちらでやらせていただきます」
今回はデザインの方法を超簡単に説明したが、世の中の大半の人はデザインの素人だから、納得のいくオリジナルジャージをデザインするには、今回インタビューしたようなプロのデザイナーのアドバイスが不可欠だ。プロの知識と感性を武器が「いいデザイン」に導いてくれる。
多くの人が意識していないところだろうが、「どれほどの腕のデザイナーが在籍しているか」は、オーダーサイクルジャージのクオリティを大きく左右する。しかも上で述べたような自転車用ウエアのデザインの良し悪しは、自転車経験者じゃないと分からないようなことも多い。いいファッションデザイナーがいいサイクルジャージをデザインできるとは限らないのだ。
手前味噌だが、このようなプロデザイナーが在籍しているということは、ビオレーサージャパンの大きな強みの一つ。ベテランサイクリストの方の中にはデザインにこだわりが強い方もいらっしゃるだろうが、「プロに任せるべきところは任せる」ことも、いいオーダーサイクルジャージを作るための重要な要素である。