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オーダーサイクルジャージのデザインの仕方 vol.1/色の基本

オーダーサイクルジャージのデザインの仕方 vol.1/色の基本

色やデザインに関しての専門家でもない限り、ウエアをゼロからデザインするのは少々ハードルが高い。何色にすればいいのか。どんな模様にすべきなのか。しかし、自分だけのデザインを作れることがオーダーサイクルジャージの一番の魅力だ。そこで、ビオレーサーに籍を置くプロのデザイナーに話を聞き、「いいデザインを作成するノウハウ」を聞いた。とはいえ、デザインや色の話を詳しくやっていると本が2冊も3冊も書けてしまうので、できるだけ簡単にまとめる。

色の物差し

まずは色の基本から。色には3つの物差しがある。色相、明度、彩度である。この3つで、「どんな色か」を指し示すことができる。

まず色相とは、赤、青、緑、黄色……のような色の違いのこと。この色相を図示したものを色相環という。ウエアのデザインをするうえでこの色相環が役に立つ(後述)。

明度は、その漢字が示すとおり色の明るさのこと。同じ青でも、明るい青と暗い青は違う。最も明度が高いのは白で、最も低いのが黒だ。彩度は色の鮮やかさで、鮮やかな赤と濁った赤は違う色である。

 

色のイメージ

次に、それぞれの色が持つイメージ(心理的作用)について。

赤は目立つ色であり、力強さや戦闘的なイメージがある。そのためか昔のロードバイクは黒×赤というカラーが多かった。信号では「止まれ」を意味することからも、「警告」を表したいときにも使われる。

黄色は非常に明るい色で、黒と組み合わせて注意喚起に用いられる。派手で陽気な雰囲気の色だが、西洋では「狂気」というややネガティブなイメージもある。

緑は直物を連想させ、安らぎを感じさせる目に優しい色。青は多くの人に好まれる色であり、空や海を連想させるが、水にも空気にも色は付いておらず、実は自然界には青はほとんど存在しない。

ピンクは女性に好まれる傾向にあるが、淡いピンクと濃いピンクではイメージが大きく異なる。トーンによって性格を変える色とも言える。

白は清潔感があり、ピュアなイメージを持つ。灰色は知的で都会的なイメージがあるが、武器や兵器のような無骨な雰囲気にもなる。黒は高級感があり、正装に用いられる一方、闇、暗黒、死のような恐ろしいイメージも持ち合わせる。

ただしこれらはあくまで一般的なイメージであり、人によって色の捉え方は大きく異なる。赤を力強いと思う人もいれば派手すぎて下品だと捉える人もいる。ピンクは世間一般では女の子の色だが、例えばナカガワピンクにそんなイメージは一切なく、どちらかと言えば力強く男性的な印象だ。

色が与える印象は時代によっても国によっても地域によっても、個人個人の感覚や経験によっても大きく変わる。要するに、ジャージをデザインするにあたって必要なのは、「○色にしたい」ではなく「どんなイメージにしたいか」という目的意識を持つことである。

 

配色のセオリー

では、ここから配色について簡単な説明を。

「どんな色にしたいか」は比較的簡単に決まるかもしれない。上の説明を頭に入れつつ、チームのイメージカラーや、デザインのコンセプトに沿った色を設定すればいい。単色ジャージならそれで終わりだが、2色以上を組み合わせる場合は、どの色を組み合わせるかが肝要になる。色の組み合わせにも、セオリーというか一般的な決まり事がある。

ここに登場するのが色相環だ。色相環において、反対側に位置する色を「反対色」といい、それらを組み合わせるとコントラストが強くなり、お互いに引き立てるいい配色とされている。例えば、青と黄色、赤と緑などだ。企業のロゴマークにもよく使われる配色である。

また、色相環で近い場所にある同系色を組み合わせても失敗しにくい。青と紫、オレンジと黄色、緑と黄緑など、色味に共通性があり、グラデーション的な色合わせが目に心地よい組み合わせだ。

色相環上での組み合わせに加えて、トーン(明度と彩度を組み合わせた概念で、色の雰囲気のこと)の変化も考えると、配色はもっと自由で楽しくなる。色相とトーン、それぞれを「大きく変化を付けるか」「近づけて共通性を持たせるか」によって、4つのパターンに分類できる。

①色相とトーンの両方を揃える配色は、<鮮やかな赤×濃いピンク><淡い青×薄い水色>のように、似た雰囲気の色同士の組み合わせになるのでまとまりやすい。

②<赤×緑><ピンク×水色>のような色相を変えてトーンを揃える配色も、もちろん組み合わせる色相によるが、調和しやすい組み合わせとなる。

③色相を揃えてトーンを変えると、<青×水色><鮮やかな赤×淡いピンク>など統一感がある組み合わせとなり、失敗しにくい。

④色相とトーンの両方に変化を付けると、<淡い黄色×濃紺><薄いピンク×濃い緑>のように、コントラストが大きくなるが、上手くやらないと失敗しやすいパターンだと言える。

もちろんこれらはあくまで原則であり、どんな色の組み合わせでも、選んだ当人が「これはいい色だ」と思えばそれはいい色なのだが、この「いい配色を作るための原則」を知っておくと、我々のような色彩の素人でも「いい配色」を作りやすくなる。

……余計に分かりにくくなった?それは残念。確かに、付け焼刃の知識で多彩な色の世界に挑もうとするのはいささか無謀かもしれない。次回から、プロのデザイナーに話を聞きつつ、ウエアのデザインの仕方を解説する予定なので、参考にしていただきたい。

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