酷暑環境下における暑さ対策/僕らはどう夏を乗り切るべきか
相変わらず暑い。インドアトレーニングが一般化しつつあるといっても、スポーツバイクは基本的に屋外スポーツだ。トラック競技を除いてレースは青空の下で行われるが、今年のツール・ド・フランスでも選手たちを苦しめる暑さが話題になった。ロードレースのオフシーズンは夏にしたほうがいいんじゃないかというジョークが飛び交ったほどだ。酷暑を乗り切る策を考える。
汗の冷却効果
暑くもなく寒くもないという気温のとき(中立気温という)、人間の体は血管を開閉させて対応調節を行っている。この「血管調整域」にいるときは、体にはなにもストレスがかかっていない。
しかし中立気温を上回ると、血管を開くだけでは対応調節ができなくなる。そのままでは体温が上がってしまい危険なため、人間の体は汗をかく。
汗は体表面で蒸発するときに気化熱で熱を奪うので、それだけ温度を下げることができる。1gの水が蒸発するときに必要な熱エネルギーは、0.58kcal。それをもとに計算すると、体重58kgの人が100gの汗をかくと、体温が約1度を下がることになる。しかし、これは汗が体表面で全て気化したときの場合だ。タオルで拭いたり流れ落ちてしまったりして蒸発しなければ「汗による冷却システム」は正しく働かない。汗は蒸発してナンボなのだ。だから自転車用ウエアは通気性が高く、汗を吸収しやすく、かつ素早く蒸発させる素材が使われている。
しかし気温や湿度が非常に高い環境下(暑熱)では、汗による冷却システムでは能力が不十分となり、深部体温が上昇してしまい、運動能力の低下を招く。体温が過度に上昇すると熱中症の発生リスクが高まる。
新しい冷却メソッド
それを防ぐために、アイススラリーやプレクーリング、手掌(しゅしょう)冷却といったメソッドが話題となっている。今年のツール・ド・フランスではイネオス・グレナディアーズの選手たちが腕を水に浸す前腕冷却を行って注目を集めた。
しかし、いずれも運動中に実施するのは難しい。
運動中に効果的な対策が肌表面を冷やす外部冷却だ。保冷剤や水分を含んだベストを着用するアイスベストが広く知られているが、スポーツバイクでは空力、フィット感、動きやすさなどが求められるため、汎用品をそのまま使うには無理がある。
ビオレーサーは、自転車専用に設計された冷却インナーベストを数年前から販売している。冷却技術と冷却製品の開発・製造で世界をリードするオランダのINUTEQ社と共同開発したもので、「インタークーラーベスト2」と「フルジップインタークーラーベスト」(いずれも14,900円)の2種が用意されている。

使われているのはPVAという素材。大量の水分を保持するもので、それを身に纏うことで気化熱による冷却効果を長時間維持する効果がある。2016年にカタールで開催されたロード世界選手権タイムトライアルで、金メダルを獲得したトニー・マルティンが着用していたのがこれだ。

水を着てしまえばいい
先に述べた通り、汗の冷却効果は高い。しかし体の表面で蒸発しないと気化熱が発生せず意味がない。PVAでできたインタークーラーベストを着用すれば、常に「水を着ている」ことになり、気化熱による冷却効果が数時間は持続する。「着る冷却装置」である。
背中と胸部の前後両面にPVAを配置したものが「フルジップインタークーラーベスト」。PVA素材は冷却効果が高く酷暑対策には最適な素材だが、伸縮性が低いことが欠点。しかしこれはフルジップとすることで、脱着性を上げた使いやすい一着だ。
そんなフルジップインタークーラーベストがモデルチェンジし、「フルジップインタークーラーベスト2」となった。全てのパネルのパターンを見直し、フィット性を向上。PVAの面積を拡大し、冷却効果と持続時間をアップさせた。首元にはアイスポケットを設けて、氷を入れることもできる。次週はその「フルジップインタークーラーベスト2」の使用感をお届けする。

