フルブリーズvsパリ、僕らはどちらで戦うべきか
ロードバイクの世界では、同じオンロードを睨んだモデルでも、軽さを優先した「軽量万能ロード」と、空力性能を追求した「エアロロード」に分かれていることが多い。どちらがどのシーンで有利なのかという話題は尽きることなく、ユーザーを悩ませている。そんな悩みはビオレーサーのラインナップにも存在する。通気性に優れたフルブリーズと、空力性能を追求したパリ・ロードレース・エアロスーツの2着だ。ウエアにもパフォーマンスを追求するサイクリストは、どちらを買うべきなのか。
フルブリーズの成り立ち
正式名称「EPIC フルブリーズ ロードレースエアロスーツ」は、酷暑のヒルクライム向けに極限まで通気性を高めたエアロスーツ。世界中で展開されるワールドモデルではなく、日本市場向けに作られたジャパンオリジナルモデルである。

かつて、厳しい暑さが予想された東京五輪用に開発され、大会が行われた2021年に市場に投入された「EPIC TOKYO GR+ ロードレースエアロスーツ」というモデルがあった。しかし、グラフェンという特殊な生地の価格高騰や入手性の悪化によって、廃版になってしまう。
しかし、日本は湿度も気温も高く、かつヒルクライムが人気ということで、本国に「酷暑のヒルクライムにも対応でき、かつ価格を抑えたウエアを」と打診。その結果完成したのがこのウエアだ。
特徴は、通気性とフィッティング。イネオスチームが山岳ステージで使っていたブリーズ・メッシュ生地を前面に採用。細身の日本人クライマー向けに、「イネオス用に開発したフィッティング」が使えることになり、通気性とフィッティングを両立させた日本独自モデルが完成した。

パリ・ロードレース・エアロスーツの出自
一方、「EPICパリ・ロードレース・エアロスーツ」は、その名の通りパリ五輪のロードレースのために作られたスペシャルモデルをベースとしたもの。レムコ・エヴェネプールが劇的な勝利を決めたときに着ていたあれだ。バイクバレーでの風洞実験を繰り返し、各パネルの素材を一枚ずつ吟味した「究極のエアロスーツ」とでもいうべき一着である。

こちらも、そのレムコが着て勝ったスペシャルな一着をベースに、日本市場に合わせて最適化したもの。具体的には、日本人の体型に合わせてフィッティングを調整し、バックポケットの作りを変更するなど、大きく手が入っている(詳細はこちら)。

どう選び分けるか
先日お伝えした第22回Mt.富士ヒルクライム公式グッズコレクションにもこの2着が用意されているが、どちらもハイエンドウエアであり、価格もそう大きく変わらない。どのように選び分けるべきなのか。
フルブリーズは低速でも通気性が低下しないため、酷暑のヒルクライムでもオーバーヒートしづらい。また、メッシュ素材を多用しているため、大量に発汗しても雨に降られてもドライな肌触りが失われず、生地が水を溜め込まないためウエアが重くなりにくいというメリットもある。パリ・ロードレース・エアロスーツは、空力的にはメッシュ素材よりも有利なエアロ系生地を全面に使っており、高速走行で活きてくる。
そういう意味では、使い分けは簡単だ。平坦で高速になるならパリ・ロードレース・エアロスーツ。低速で暑いのならフルブリーズ。
判断が難しいのは、富士ヒルのようなコースである。パワーがある人にとっては十分高速になり、パリ・ロードレース・エアロスーツが効く領域に入る。コースは上り一辺倒ではなく、高速になるエリアもあるから、ウエアの空力性能で稼ぎ出せる数秒が、順位やリングの色を大きく変える可能性がある。
そこまでではないクライマーにとってはフルブリーズの通気性がないと暑さを感じるほどの低速になる。この記事で説明しているように、体表面にできるだけたくさんの風を当てることが涼しく快適に走るためのコツだ。

要素は多い
富士ヒルは、その空力性能と通気性のティッピングポイントを中心に参加者が分布しているというやっかいなコースだ。
「平均速度が○km/タイム○分を境目に、フルブリーズとパリの優位性がひっくり返る」と断言できればいいのだが、体形、フォーム、体質、好み、そしてもちろん当日の気温や湿度もからんでくるので、明示はできない。
結局、「そういう様々な要素を踏まえたうえで判断し選んでください」と言うしかないのだが、2着ともビオレーサーのハイエンドライン「EPIC」の製品であり、どちらを選んでもそれぞれの分野でほぼ最高レベルものもが手に入ることは確かだ。イネオスが灼熱の山岳で愛した通気性か。レムコが金を獲った空力か。悩む時間はもう少し残っている。


