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ドリームチーム2024メンバーコメント 夢の行方(前編)
先日公開したMt.富士ヒルクライム2024レポート「ドリームチームの意味と価値」に続き、今回はドリームチームのメンバー全員のコメントをお届けする。記事作成側の都合としては、このような記事はさほど文章量を多くせず、さらりと読みやすく仕立てるのがセオリーなのだが、各メンバーの言葉が熱く、削って簡素にまとめるのが難しかった。結果、かなり長くなってしまったが、ぜひご一読あれ。
「ずっと続けばいいのに」(大賀道博さん)
「初めての選抜クラス。作戦は『いけるところまで先頭集団に付いていく』というシンプルなものでした。3分でちぎれるかもしれないし、もっといけるかもしれない。ただ、練習ではそれなりの手ごたえを感じていましたし、当日は少しでも有利になるように早起きして最前列を確保しました。
スタートし、計測地点を通過すると、一気にペースが上がります。でも付いていけないほどじゃない。ペースが落ち着くまで耐えるしかない。そう言い聞かせてペダルを回します。しかし、一合目を通過したあたりで少しずつポジションを下げてしまい、ギリギリのペースで耐えるものの、10km地点、25分30秒を確認したところで集団からちぎれてしまいます。
『ああ、前には選手がたくさんいるのに、俺の力はこんなもんか……これで終わりか……』と思考が停止するも、しばらく単独走をして落ち着きを取り戻すと、周囲にちらほら同じようにちぎれた人たちの姿が。そこからは気持ちを切り替え、彼らとともに集団を作ることにしました。最初は4~5名でしたが、リザルトを見ると最終的には15~16名になっていたようです。
先頭を引いていたのは私を含めた4~5名だったように思いますが、この集団がとにかく楽しかった。だって、終わったと思ったレースが、また動き出したように思えたのですから。みんな限界が近い様子でしたが、『短く回そう!』『最後までみんなでいくぞ!』『疲れたら後ろで休んでいいよ!』などなど、前向きな言葉を掛け合って、トレインを前に進めていきました。
結果としてプラチナには40秒届きませんでしたが、力を出し切ること、そしてとにかく楽しむことという目標は達成できました。
レース後、たくさんの方からトレイン形成についてお礼のメッセージが届きました。みんなギリギリの中で形成したトレイン。最高でした。あの集団の中で走っていたときは、『ああ、こんな時間がずっと続けばいいのに……』とさえ感じました。
こんな走りができたのも、ドリームチームに選ばれたからかもしれません。まず選んでいただいたことの喜びと感謝。選ばれたからには自分のベストを尽くそうと、やる気が湧いてきましたし、自分にとっては注目されていることもパワーになりました。このドリームチームでの経験は、最高の思い出です」
「得られた尊いもの」(takinaさん)
「単独ではゴールドを確実に達成できるだけのパワーがなかったため、同じレベルの脚力の仲間とトレインを組んで協力しながらゴールドを目指す、という計画でした。
具体的には、斜度が緩い一合目下駐車場までにトレインを形成し、三合目まではスピードを出しつつスタミナ温存。奥庭を超えてからはローテーションでスピードを維持する、といったトレイン前提のもの。
しかし、今年からスタート時の整列方法が変更になり、計画していたトレインがパレードの時点で分断、仲間の1人と合流できたのは一合目を過ぎたあたり。また、二合目を過ぎてもメンバーと合流できず、しかも周りに脚の合いそうなライダーがおらず、万事休す。
とりあえずゴールドを目指して2人でローテーションを回すも目標タイムからはジリジリ離されていく苦しい状況に。大沢駐車場手前で10人程度の速いトレインに追い抜かれたのでなんとかしがみつきましたが、ここで相方が脱落してしまいます。このトレインのスピードが予想以上で、山岳スプリット地点でちぎれ、いよいよ単独走に。奥庭でデッドラインの1時間を過ぎてしまい、ゴールドタイムに間に合わないことを確信しつつ、無念の単独フィニッシュ。想定外の出来事に対応できるだけの脚がありませんでした。
結果としては目標達成できなかったものの、ドリームチームの活動を通じて得られた仲間やその思い出は尊いものだったと感じています」
「パワーをたくさんもらった」(おだえりさん)
「富士ヒルのコースを走ったのは、試走会の1回のみ。通しで走るのは、本番が初です。
前半と最後を追い込み、中盤は落とし過ぎないように留意しながらイーブンペースで走ろうと決めていました。しかし、序盤2kmで療養中の左脚の突っ張りを感じ、少しペースダウン。
そんなときにシクロクロスのチームメイトの背中を見つけ、少しツキイチして脚休め。そこからペースアップするも、風をもろに受けながら走ったことで脚を使ってしまいます。また、脚が合うトレインに出会うことなく、単独で走る時間が多くなってしまい、大きくタイムロスをしてしまいました。
脚つきなし・ブロンズ獲得という目標は達成できましたが、レースに向けてのトレーニングや食事や体重管理といった面では『やりきった』とまでは言えません。
しかし、登坂が大っ嫌いで大の苦手な私が、療養中の左脚に負けず、最後まで諦めずに頂上にたどり着けたのは、ドリームチームの存在があったからと言っても過言ではありません。『ドリチ!』、『おだえり!』の声援が至る所であり、パワーをたくさん頂きました!」
「レースの世界は厳しい」(リョウさん)
「昨年のシルバー取得後もトレーニングを続け、ドリームチームに選出後は朝練・夜練の二部制を導入し、SSTを中心としたメニューで3月は1980km、4月は2000km乗り込みました。体重は減らすことはできませんでしたが、維持した状態で体脂肪を減らし、筋肉量が増え、FTPも32W上げることができました。この時点でPWRは約4.6。単独でゴールド取得は難しい数字だったので、『どう走るか』が課題でした。
本番ではチームのメンバーがゴールドトレインを形成してくれ、『脚力の足りないメンバーはローテーションには加わらずにしがみつく』という作戦を立ててくれました。当初は走りながらトレインを探すつもりだったので、これはすごくありがたかったですね。初めて会う方とも挨拶を交わし、『行きましょう!』『頑張りましょう!』と前向きな雰囲気に包まれていたのが印象的でした。
ただ、実際に走り始めるとそこは厳しいレースの世界。1合目を過ぎた地点でズルズルと落ちてしまい、追いつけそうで追いつけないトレインを見送り、最後は単独走に。結果は全然ダメでした。FTP領域にもっと長く滞在するトレーニングが足りなかったのかなと思っています。気持ち的に飲まれてしまっていた部分もあり、反省しています。
しかし、今回はドリームチームの一員として参加したことで、自分の世界が広がりました。昨年は1人で現地入りして受付を済ませ、宿に泊まり、翌日はレースに出て帰るという、誰とも会話することなく孤独な大会でした。今年は、メンバーはもちろん、メンバーに選出されたことで知り合った多くのサイクリストと交流でき、レース中も『ドリームチーム頑張れ!』と声をかけて頂き、家族は今回のメンバー選出を自分の事のように喜んでくれ、応援にも来てくれました。
一方で、責任を感じている部分も多くあり、何とか結果を出さないと、という思いが強くなってしまい、トレーニングや減量に過度に取り組んでしまいました。ローラーでハンガーノックの症状がでてバイクから落ちたり、インターバルの休憩時に低血糖で気絶したり、レストを入れるのが怖くて毎日のように追い込んでしまったり……。
せっかく頂いた機会を台無しにしてしまった。レース後、そんな想いでブースに戻ったところ、ビオレーサーのスタッフOさんに『ゴールドを狙うと言える場所にいたことがすごいことなんですよ』と声をかけていただき、その言葉に救われました。今回のメンバー選出で得た人との繋がりを大切にし、しっかりとトレーニングを積み、来年リベンジします。本当にありがとうございました」
「今年の収穫を来年に」(えーぞうさん)
「今年はオフィシャルパートナーとして参加させて頂いたので、チームを盛り上げることを目標としていました。今年のドリームチームはメンバーのコミュ力の高さもあってか、練習会などが活発に行われ、例年以上にメンバー同士の交流やモチベーションアップの機会が増え、一定の役割は果たせたと感じています。
私自身の目標は、『チャレンジのレース』。昨年まではトレインを形成して理想的な展開とペースを作りタイムを稼ぐ走り方をしていたのですが、今年はあえてゴールドペースのグループに入り、どこまで付いていけるのか、ちぎれた後もどこまで頑張れるのか、と自分を試す走りをしてみました。
結果としては去年と同じく70分切りというタイムでしたが、それ以上に自分に足りないものが明確化され、大きな収穫となりました。この経験を元に、来年につなげたいと思います。
来年もドリームチームが結成されるのであれば、新メンバーやドリームチームを応援してくれる人達に、この活動の魅力が伝えられればと思います。ドリームチームも今年で4年目。OB・OGも増えてきたため、来年以降はOB・OGと現役メンバーの交流なども考えたいですね」
「強くなった富士ヒルへの想い」(最強ヒルクライマーさん)
「今回は主催者選抜で走らせてもらえることになったので、序盤は選抜の集団に付き、余力を残しつつ離脱、同じペースの参加者と協力してタイムを目指す、という戦略を立てました。
しかし、選抜の高負荷に耐える練習が足りておらず、集団から離脱するタイミングが想定より早くなってしまい、周りも自分と同じく疲れている人たちばかりとなったことで、その後のペースアップも叶わず、ズルズルとペースダウンしゴールすることになりました。結果は1時間5分55秒とゴールドリングには1分ほど足りず、目標は達成できませんでした。
スタートの時点ではゴールド獲得の自信があったのですが、レース中の自分の立ち回りが想定より甘くなってしまい、最後は単独走で己の無力さを実感しながら不甲斐なく走り切る形に。
ただ、レース後に同じドリームチームのメンバーが目標を叶えたり、惜しくも達成できず涙する姿を目にしたことで、達成できなかった自分もこれから頑張ろうと思うことができました。富士ヒルへの想いがドリームチーム選出当初より強くなったことに自分自身も驚いています」
「富士ヒルのことばかり考えていた半年間」(まさトゥーさん)
「目標は『総重量83kg以上で64分切り』。それに対して、結果は総重量80.1kg、64分56秒で、目標達成は叶いませんでした。
そもそもこの重量を含んだ目標設定は、ロードレース用のフィジカルを鍛えるため、上りだけでなく平坦も速く走れるようにパワーの底上げをメインテーマとしたものです。そのため減量は一切考えず、それを補うパワーをどれだけ付けられるかを意識し練習しました。
4月から5月にかけて体調不良と怪我が重なり、予定していたフィジカルには到達できませんでしたが、目標タイムは達成できる見込みがありました。
一昨年、にんにんさんのゴールドトレインに乗ってゴールドを獲得できたので、その恩返しのつもりで今度は自分がゴールドトレインを作ってゴールドを目指す人の手助けができれば、と思い本戦に望みました。具体的な戦略は、ゴールドを目指す知り合い数人とトレインを形成し、基本的にメンバーのみでローテーション、各ポイントに目標タイムを設定し、都度修正していくというもの。
当日はドリームチームのたっくみんさん、リョウさん、星狐さん、えーぞうさんが加わり、20人ほどの大所帯に。前半は目標に対して大幅に貯金を稼ぐも、後半は向かい風となり貯金がゼロになって遅れ始めてしまいます。トレインのメンバーも疲労が溜まっているようで、なかなかペースが上がらず、奥庭駐車場で想定していたゴールド獲得のデッドラインを過ぎてしまいました。『64分切り』と『全員でゴールドを取る』という目標は諦め、脚が残っている人だけでもゴールドを取ってもらうよう作戦を切り替え、『平坦飛ばすよ!』とみんなに声をかけて全力で前を引きました。最後まで踏み抜き、ギリギリゴールドタイムで完走。ただ、一緒にトレインを組んでいたメンバーがゴールドを取れなかったことが悔しかったですね。
この半年は富士ヒルのことばかり考えていたように思います。掲げた目標に対して真剣に取り組む覚悟を決めたメンバーを見て、自分も頑張ろうと思えました。また、今回のドリームチームへの参加を通して新たな仲間の輪が広がりました。メンバーとして活動していた半年間は、富士ヒルが終わってしまうのが淋しくなるくらい楽しい時間でした」
「チームのみんなが奮い立たせてくれた」(はなまるさん)
「『2年後のシルバーを見据えた80分切り』を目標としていましたが、達成ならず。もちろん悔しさもありますが、昨年のタイム(92分47秒)、一昨年のタイム(88分47秒)から大幅に短縮し、自己ベストの84分54秒で走り切れたことには嬉しさを感じています。ドリームチームのメンバーになったことで、『練習を継続すること』が習慣化できたからこその結果だと思います。
また、ドリームチームに入ったことで、メンバー全員と仲間になれたうえ、彼ら1人1人の富士ヒルに懸ける思いや努力を間近で知ることができたことは、私にとって大きな財産となりました。
『皆もこんなに努力しているのだから、私ももっと練習を継続して強くなるんだ』と、チームが始動してから本番当日まで、ずっと自分を奮い立たせることができました。そのおかげで、第2目標だった85分切りを達成できました。未達成までわずか6秒とギリギリでしたが、この6秒は、間違いなくドリームチームのおかげです。
ただし、私の目標はまだ終わっていません。来年のシルバー獲得を目標に練習あるのみです。現時点では到底『2年後のシルバーを見据えられる』タイムではありませんが、やれるところまで頑張ってみようと強く思っています。
最後に。数か月ではありましたが、私にとって自転車の趣味の幅が広がる、貴重な機会でした。あらためて、選定いただきありがとうございました。本当に楽しかったです。ここで繋がれたご縁を大切に、これからも頑張っていきたいと思います。次世代のドリームチームも応援しております!」