富士ヒル公式試走会レポート/“公式”の意味と価値
先日、富士ヒル初となる「ショップによる“公式”試走会」が行われた。開催したなるしまフレンドとRXバイクの試走会レポートをお届けする。
試走会の価値向上を
ビオレーサー・ジャパンが数年前から構想を練っていた取り組みがある。「Mt.富士ヒルクライム×ビオレーサー/ショップ公式試走会」だ。日本最大級のヒルクライムレースであるMt.富士ヒルクライムと、そのメインスポンサーであるビオレーサーが協力し実施した富士ヒルの試走会イベントである。
試走会の開催方法などは各ショップに任せ、ビオレーサーは「“公式”という冠の使用の認可」と「認可するショップの選定」、「試走会参加者限定のノベルティグッズの製作・提供」に留まるが、それを通じて「富士ヒル試走会の価値向上」「ショップの顧客満足度向上」「ショップと新規顧客の接点作り」などを目的とした取り組みだ。
経験豊富なショップスタッフに走り方やコース攻略のコツ、ペース配分、機材のアドバイス、乗り方などのアドバイスを貰え、本番に向けて準備ができる貴重な場となる。一人で試走するより、効果はかなり大きくなるはずだ。
また、大会の安全性アップにも貢献できる。近年、富士ヒル試走において下りの事故が増えており、問題視されつつある。そうしたなか、この試走会で下り方講習など安全性を高める取り組みをしてもらえれば、大会の安全性向上につながるはずだ。
ショップと参加者の架け橋
初回となる今年、この取り組みの趣旨に賛同いただいた数々のショップの中から選定されたのは、なるしまフレンド、トライクル、RXバイクの3店舗。残念ながらトライクル主催の試走会は悪天のため中止となってしまったが、好天のなか公式試走会を開催したなるしまフレンドとRXバイクに話を聞いた。
まずはなるしまフレンドから。取材に応えていただいたのは代表の鈴木 淳さんだ。
「うちは毎年、富士ヒルの試走会をやっているんです。今年もやろうと思っていたところ、ビオレーサーから今回の話があったので、せっかくなら、と『公式試走会』とさせてもらいました。今年の参加者は7人。各々のペースで走る形式ですが、サポートカーを帯同させて、荷物の運搬やトラブル時の対応を行いました。サポートカーがあれば、途中で体調を崩してもピックアップできますし、寒さや強風でダウンヒルが心配という参加者は下りのみサポートカーに乗ってもらうこともできます。参加者の方々の満足度は高かったようです」
「当店の試走会はクラブ員を対象にしているので、告知も募集も基本的にクローズドなんです。今後、一般のお客さんを受け入れるにしても、認知されにくく入りづらい雰囲気があるのは確か。そこで、今回のようにビオレーサーが『公式』と謳ってHPで試走会開催を告知してくれたことで、ショップと参加者の架け橋になってくれる可能性は感じました。今後は、参加者に大会当日のブースで使えるクーポンを配布するなどのサービスがあるといいかもしれません」
“公式”の冠に見合うだけの内容に
次はRXバイクのオーナー、高岡亮寛さん。
「うちのショップのお客さんで富士ヒルに参加される方は多いので、いずれにせよ試走会は開催しようと思っていました。そんなときにちょうどビオレーサーの企画を知り、ならば公式試走会にしてしまおうと。当日はコースを4つの区間に分けて走りました。あらかじめ参加者の方々の目標タイムを聞いて、それぞれの区間の想定タイムを計算し、『目標タイムを出すには、この区間はこのくらいのタイムで走りましょう』とアドバイスをさせてもらいました。本番を想定して集団走行の練習や、走り方のレクチャーも行いました」
「ビオレーサーが公式と銘打って始めてくれたので、”公式”の名に恥じないように内容を充実させ、『ただ一緒に走る』だけではなく、濃い内容の有料試走会として開催することにしました。今年は参加者にノベルティグッズが提供されましたが、今後は“公式”ならではの価値がもっと高まるといいと思います」
一年にたったの一回のチャンス。富士ヒルに挑むクライマーは、それに向けて目標を掲げ、自分を律し、トレーニングを積んで挑む。万全の準備を整えるには、本番と同じ場所での試走が必要だが、内容をより充実させた今回の公式試走会は、参加者の実力を発揮させるためだけではなく、安全に下るノウハウも得られる貴重な機会となった。来年以降は、参加店舗を増やしていく予定だ。