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ビオレーサー本社インタビュー(後編)/開発者の本音

ビオレーサー本社インタビュー(後編)/開発者の本音

技術主導型ウエアメーカーであり、一般への訴求や広告はあまり得意ではないビオレーサー。日本での販売を手掛けるビオレーサー・ジャパンとしては、その愚直な姿勢が少々もどかしく感じることもある。ならばこっちから聞き出してやろう。プロダクト部門の責任者を務め、プロチームや各国の自転車連盟などと連携しながら製品の企画・開発などを手掛けるイタリア出身のエンリコ・アッコルシさんと空力開発の担当者であるエラ・レイズさんに、ビオレーサーの製品哲学や開発姿勢に関して、リモートにて話を聞いた。

※前編はこちら

他社の模倣に関して

Q:風洞実験や素材のテストなど、ビオレーサーは開発にかなりの資金を投じていますよね。しかしビオレーサーがそうして技術の粋を結集した新製品を発売すると、他社が似たような生地を使った安価なコピー製品を作って売り出すことがあります。そうした状況のなかで、どうやってモチベーションを保っているのか教えてください。

A:残念ながらそういうことは多々起きています。私たちも各国のディストリビューターがフラストレーションを抱えていることを把握しています。しかし、なぜ私たちが開発を続けるモチベーションを保てているのかというと、コピー品は見た目を模倣しているだけで、「速いウエアのふり」をしているに過ぎません。私たちの製品はプロのアスリートのために作られたものですが、プロ選手はビオレーサーのウエアを使わなければいけないわけではありません。プロチームや自転車競技連盟によってテストされた結果、ビオレーサーのウエアに利点がなければ、すぐにでも別のメーカーのウエアを選ぶでしょう。それでも彼らは私たちの製品を選んでくれています。それが私たちがモチベーションを保ち続けている理由です。

左がエラ・レイズさん、右がエンリコ・アッコルシさん。

 

どのように新素材を調達・開発するのか

Q:ビオレーサーは様々な生地を使いますが、新しい素材はどのように調達しているのでしょうか?

A:私たちは専門の繊維会社とパートナーシップを組んでおり、常に新しい素材の情報を得ています。そうして常にアンテナを張り、空力性能、伸縮性、通気性、耐久性を向上させる生地を探しています。生地メーカーが新素材を提案してくれることもあります。

新しい素材を見つけるとまずはテストにかけて性能をチェックします。エアロウエアの場合、風洞実験で生地を個別にテストし、空気の流れにどのような影響を与えるかを検証します。エアロストライプのようなテクスチャー加工された生地は、そのような実験において空気抵抗を低減する効果があると分かったものです。これこそが、私たちの「徹底的なテスト(The Most Tested)」アプローチなんです。よりよい製品にするためにビオレーサー専用の生地の開発を依頼することもあります。

しかし、生地だけでウエアの性能が決まるわけではありません。ウエアのパフォーマンスは、すべての要素がどのように組み合わされるかによって決まります。パネルの配置、縫い目の位置、そして全体の構造、それら全てが重要です。

 

ウエアに求められる安全性

Q:レースで多くの事故が起きている今、UCIは安全性を重視し始めています。ウエアメーカーとして、ウエアの安全性に関してはどのように考えていますか?

A:事故が増えているのは事実です。UCIがプロライダーに対して安全装備や安全ハードウェアの使用を義務付けるという噂もあります。近々、安全性に関するルールに変更がありそうですが、それがいつになるか、どんなルールになるのかは分かりません。噂では、タイムトライアル種目からエアバッグシステムのようなものが導入されるのではないかと言われていますが、現時点で確実なことは言えません。

しかし、すでにいくつかのメーカーがこの方向で製品開発を始めており、保護機能を持つウエアが開発されつつありますが、それは主に耐摩耗性に重点を置いたものです。転倒した際に路面を滑ってできる擦過傷を防ぐものですね。エアバッグのように木や車に衝突した際に命を救うものではありませんが、怪我防止には役立ちます。もちろん、標準的な生地に比べると伸縮性・通気性は劣ります。

現時点では、安全性を重視したウエアは、ウエアとしての性能が低下するため、プロライダーたちは否定的です。しかし、今後は安全性の重要性はますます高まるでしょう。これまでの要素が空力、快適性、通気性であったなら、近いうちに安全性が第四の要素として加わると思います。ロードレースにおいて、ヘルメットが義務化されたときのことを覚えていますか?2000年代の初めまで、ヘルメットは義務ではありませんでしたね。でも今では誰もがヘルメットを被っており、それを皆が受け入れています。空力的に洗練され、どんどん進化しています。ウエアもそうなるでしょう。

プロレースで義務化されると一気に広まるかもしれませんし、一般ユーザーの需要の高まりによって浸透するかもしれません。ベルギーやオランダでは、プロライダーの保険が非常に高額なんです。保険会社は、ライダーがプロテクターを着用することで保険料を割引するプランを提供しています。同じことが一般サイクリストにも起きています。ともかく安全性を重視したウエアは遅かれ早かれ出てくると思います。

なぜ数字でアピールしないのか

Q:バイクメーカーやホイールメーカーは、空力抵抗の削減値や秒数・ワット数といった具体的な数字でマーケティングを行っています。しかし、ウエアではどのメーカーも行っていません。ウエアの場合、数値での訴求が難しいのでしょうか?それとも業界としてそのアプローチを避けてきた別の理由があるのでしょうか?

A:正直なところ、宣伝に使用できるような確実な数字を得るのは難しいんです。ビオレーサーがドイツ連盟と協力して行ったテストでは、空気抵抗を減らすうえで重要な要素を100%とした場合、ソックスなどを含めたウエア全体での潜在的な節約効果は約8%と推定されました。決して小さい数字ではありませんが、多くのウエアメーカーが数字でアピールを行わないのは、8%という数字が大したことがないように見えるからかもしれません。

また、性能向上を数字で示したとしても、全てのライダーにその効果をもたらすとは言えないんです。フレームはしっかりした形状の固い物体です。ホイールもヘルメットも同じです。形状が変わらないので、空気抵抗削減幅を比較的容易に示すことができます。しかし、ウエアはフィット感や体型によって大幅に数字が増減します。数字が安定しないんですね。そのため、多くのウエアメーカーが数字を提示することに消極的なんだと思います。

例えば、レムコ・エヴェネプールの場合、ウエアが何であっても空気抵抗にほとんど差がありません。彼のポジションが非常に空力的に優れているため、ウエアの影響は小さいのです。このように、同じウエアでもどんなライダーがどう着用するかによってその性能は変わるのです。売り上げだけを考えれば、分かりやすい数字でアピールしたほうがいいのかもしれませんが、私たちはユーザーをだますようなことはしたくないのです。

 

Q:では最後に、日本のビオレーサーユーザーに一言お願いします。

A:私たちは、ファッションやライフスタイルを志向する会社ではありません。しかし、そんなビオレーサーにとって幸運なことに、この日本を含めた世界中で、アマチュアサイクリストがよりパフォーマンス重視になってきており、ウエアにも純粋なパフォーマンスを求めるようになってきています。

ビオレーサーのDNAはプロライダーの世界に根差したものであり、ウエアの世界で最先端を追求し続けますが、それによって得られた機能や利点を市販ウエアに反映することにも力を入れていきます。だからウエアは今後、もっと進化するでしょう。楽しみにしていてください。

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