ルーツ・スポーツ・ジャパン代表 中島祥元さんインタビュー(前編)/「心が動く瞬間」を作る人
「自転車×地域創生」をテーマにお届けするインタビュー企画。3人目は、数多くのイベントを手掛けるルーツ・スポーツ・ジャパン代表の中島祥元さん。地域活性化に対する想いと、スポーツツーリズムの未来について聞く。
日本にスポーツを根づかせるため
自転車×地方創生というテーマなら、この人に話を聞かないわけにはいかない。ルーツ・スポーツ・ジャパン代表の中島祥元さんである。
1976年、富山県高岡市に生まれる。早稲田大学の人間科学部スポーツ科学科に進学し、スポーツビジネスを学んだことでスポーツを仕事にしたいと考え、卒業後の2001年に仲間と一緒に会社を立ち上げる。そこで8年間スポーツに関する事業を展開したのち、2009年に自身の会社、ルーツ・スポーツ・ジャパンを創業。社名には「日本にスポーツを根づかせる」という意味を込めた。

企業理念は2つ。「スポーツで得られる感動や気持ちよさ、心が動く瞬間を作りたい」。そして、もう一つが「地方創生」である。
「僕は地方出身なのですが、故郷への思いは強いほうだと思います。そして自分の地元に限らず日本各地の地方都市が、人口減少や活力低下といった問題に直面しています。自分にとって大切にしたい軸は2つあり、『スポーツで心が前向きに動く機会を増やす』ことと、『スポーツの力で日本各地を元気する』ということ。その2つを結びつけようとルーツ・スポーツ・ジャパンを立ち上げたんです」
「事業内容はざっくり言うと『スポーツ×地域活性化』ですが、4つの内容に分けられます。まずはスポーツイベントの企画運営。主に公道を使ったサイクリング・ランニングのイベントを行っています。それに関連する事業としてサイクルツーリズム関連。日本各地の地域とサイクリストの双方に喜んでもらうための事業を多数手がけています。その手段としては、イベント開催、コースの作成、サイクリングガイドの育成、施設へのサービス提供、マーケティング支援などですね。イベントだけではなくスマホアプリを使った企画も展開しており、現在はトラベロというサイクリングアプリを運営しています。また、マーケティング調査や計画・戦略策定など、主に地方自治体に向けたコンサルティング系の業務も行います」

中国のロードレースに衝撃を受ける
自転車との出会いは仕事だった。
「前職のとき、中国で行われる自転車ロードレースの運営をサポートするという仕事を請け負ったんです。そのときに初めて自転車レースというものを見ました。日本でいうと銀座のような街中の公道を使ってダイナミックなレースが行われていて、多くの観客が沿道に集まって観戦している。逆に普段は人がいないような場所でも、そのロードレースのときには大勢の人が集まって、黒山の人だかりになるんです」
「僕はバレーボールやバスケットボールをやってきたんですが、スタジアムや体育館でやるスポーツとは違った、こういう地域全体を使うスポーツもあるんだ、と驚きました。『これはまさに地域を盛り上げるスポーツじゃないか、これをぜひ日本でやりたい!』と。それが今の仕事の原点ですね」
「地域活性化という観点から自転車の世界に入った」という珍しいパターンかもしれない。そうして、自身の会社では自転車イベントを多数手がけることとなった。
「2009年の創業から3年間ほどは、受託の仕事ばかりだったんです。でも、自分たちが主になってやっていきたいという思いがずっとありました。そんなとき、東日本大震災が起きて東北が壊滅的な被害を受けます(2011年3月)。それによって『日本の各地域を元気にしたい』という思いがさらに強くなり、『自分たちにできるのは、イベントを作って地域に人を呼んで魅力を知ってもらうことだ』と考え、主催イベントとしてシリーズ戦を立ち上げたんです」。

ツール・ド・ニッポンへ
当初は「ウィズスポ」というプロジェクト名で、初年度は自転車やランニングなど6~7イベントを主催した。そこから自転車イベントが独立し、「ツール・ド・ニッポン」というプロジェクトとなった。
「一言でいうと『サイクリストと地方の幸せなマッチングを作るプロジェクト』で、2019年頃には全国で20大会ほど開催するまでに成長しました。しかしコロナの影響でイベントができなくなってしまったんです。そこで『1DAYイベントじゃなくてもできることはあるはずだ』と、アプリを使って各地を走る期間型のイベント(サイクルボール等)を始めました」

「従来の1DAYイベントに加えて、新たな形式の期間型イベント、それに少人数のツアー形式のイベント等も合わせて、昨年は年間100本以上のイベントを行いました。元々展開していた1DAYイベントのシリーズである『ツール・ド・ニッポン』に加え、期間型の『サイクルボール』、『Japan Peaks』、『ライドアラウンド』等々、コロナ禍の最中に、自社内に様々なブランドが増えました。全体的に少し分かりにくくなってしまっているので、今は自社ブランドの整理を進めているところです」
そんな中島さんたちが今最も力を入れているものの一つが「富士いち」。後編では、富士いちを通して「自転車を使った地方創生」に対する想いを聞く。

