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ビオレーサー・冬用ベースレイヤー4種インプレ
上半身の肌に触れているのはジャージではなくインナーウエアだから、アンダーもしくはベースレイヤーとも呼ばれるそれが着心地を決めていると言えるかもしれない。ビオレーサーの秋・冬・春用のベースレイヤー4種の使用感をお伝えする。
スリーブレスライトベースレイヤー
ビオレーサーは、インタークーラーベストを含めた夏用3種のほかに、秋~冬~春先向けのインナーを4種ラインナップしている。冬用アイテムインプレ第4弾は、以下のインナーウエアを取り上げる。
・スリーブレスライトベースレイヤー(15℃前後)
・ショートスリーブライトベースレイヤー(10~15℃)
・ロングスリーブライトベースレイヤー(5~10℃)
・ロングスリーブタートルネックミディアムベースレイヤー(-5~10℃)
対応温度帯の高い順で、まずはスリーブレスライトベースレイヤーから。秋や春先のミッドシーズンに活躍するインナーウエアで、対応気温は15℃前後。
素材となるポリプロピレンは吸湿性を持たない(水を吸わない)ため、衣類の素材としては不適に思えるが、生地が汗を貯め込まず素早く蒸発させるため、インナーなどの速乾性素材としてはむしろ適している。冬季のインナーウエアには、汗冷えを防ぐという重要な機能が求められる。生地が汗を吸ってしまうと、着用感の悪化に加え、汗冷えの原因になるからだ。
さらに、ポリプロピレンは熱伝導率が低い(熱を伝えにくい)ので、体温を外部に逃がしにくく、冷気を体に伝えにくいというメリットもある。また、軽量であることも特徴で、比重が1を切っているので水に浮かぶほど軽い。紫外線に弱いことが欠点だが、ジャージの下に着用するのでそこは問題にならない。

胸部と背中の通気性パネルが汗を効果的に発散し、体温を適切に維持する。
実物を見ると、胴周りに縫い目がない。いわゆる「丸胴」と呼ばれる構造で(縫い目があるのは「横割り」)、体にフィットするインナーウエアだと脇に縫い目が当たらないので着心地がよくなるというメリットがある。
着用すると伸縮性が高く、フィット感はかなり良好。夏用のインナーとは違って生地の目が細かく、さらに前述のポリプロピレンの素材特性もあって適度な暖かさがある。肌寒い時期に最適な一枚。
ショートスリーブライトベースレイヤー
ショートスリーブライトベースレイヤーは、上のスリーブレスライトベースレイヤーに袖を加えたモデル。ベース部分の作りはスリーブレスライトベースレイヤーと同じだが、袖~襟周りはパネル形状が別物になっており、ノースリーブとショートスリーブでカッティングが最適化されている。
対応気温は10~15℃となり、ノースリーブに比べて5℃ほど低い。袖の有無でそこまで変わるかと思いきや、脇を生地で覆うだけで体感温度はかなり変わる。体温計を脇に挟むことからも分かるように、脇は体の深部に近いためだ。
袖周りが窮屈なインナーもあるが、これは肩回りにピタリとフィットするのにカッティングがよく伸縮性に富んでいるので前傾姿勢の維持を邪魔しない。最高気温が10℃中盤となる3月に、薄手の長袖ジャージと組み合わせて走りたい。
ロングスリーブライトベースレイヤー
ロングスリーブライトベースレイヤーは、ショートスリーブライトベースレイヤーと生地自体は同じもののようだが、ロングスリーブのほうが襟が高くなっているなど、細かく作りが変えられている。
スリーブレスライトベースレイヤー/ショートスリーブライトベースレイヤー/ロングスリーブライトベースレイヤーに共通するポリプロピレン生地だが、そのいかにも合成繊維っぽいネーミングに反して肌触りは非常に滑らかで、ちくちく感やゴワゴワ感は皆無。ヒルクライムで汗をかいても肌がべちゃべちゃにならず、汗が生地に残らないのでダウンヒルで体が冷えることはない。
生地自体は薄いが保温性があるためじんわりと暖かく、長袖ジャージやジャケットで調整をすれば晩秋から初春まで長く使えそう。一日着用しても汗臭くなりづらいこともメリットだ。
ロングスリーブタートルネックミディアムベースレイヤー
ここまで紹介してきたインナーが3着ともポリプロピレン(化学繊維)だったのに対し、このロングスリーブタートルネックミディアムベースレイヤーはメリノウールという天然素材を生地に用いる。
メリノウールとはメリノ種の羊の毛のことで、一般的なウール(繊維の直径24~42μm)に比べて細い(17~25μm)がゆえに肌触りがいいことが特徴。吸湿速乾性も高く、汗を効率よく吸って肌からセカンドレイヤー(ジャージ)へと移してくれる。それによって汗が肌に残りづらいため、気化熱による体温低下を防ぎ、冬季の登山やスキーなどのウインタースポーツでも使われる。また、他のウールに比べて縮れが細かいため、生地の中に空気を貯めやすく、保温効果も高い。高級インナーウエアにメリノウール製が多いのは、以上のような理由によるものだ。
そんな素材特性に加え、タートルネックになっていることも特徴。高さがあり、かつ首にピタリとフィットするので、前傾姿勢でも冷気が侵入しない。ネックウォーマーよりよっぽど防寒性が高い(ネックウォーマーは首に密着してくれないので、走行時に冷風が当たると見た目ほど暖かくない)。化学繊維のほうが速乾性は高いが、厳冬期用のウエアなので大量に発汗するような環境では使わないから問題ない。
登山やスキーと同様、自転車は登坂で大量の汗をかき、下りではエンジン付きの乗り物と同じくらいのスピードで風を切るのだから、吸汗性速乾性保温性防風性通気性柔軟性などの要求両立レベルが非常に高い。「冬の自転車」は、ウエアにとっては過酷な条件である。
自転車に限らず、ベテランになればなるほどアウターよりインナー(ベースレイヤー)にお金をかけるようになると言われるが、それもむべなるかな。反対方向から考えれば、いいインナーウエアを使えばライドの質を上げられるということ。今回のインプレではそれを実感した。