エピックウルトラライトジャージ/エピックビブショーツ インプレッション
トッププロの容赦ない声を忠実に製品に落とし込み、シビアな世界で戦う選手から高い評価を得ているビオレーサーのカスタムウエア。その性能を、洗練されたデザインで包んだビオレーサーの2025コレクション。そのインプレッションをお届けする。
さすがの完成度
定評あるカスタムオーダー(エピック&アイコン)と同じ作りとなり、これまで傍流だった既製ウエアがビオレーサーの主流に合流した2025年。同時にデザインも一気にあか抜けたものとなった、ということは前回の記事でお伝えした。
今回は、そんな新生コレクションのインプレッションをお届けする。取り上げるのはハイエンドラインのエピック。エピックウルトラライトジャージとエピックビブショーツである。
まずはジャージから。試したのは酷暑環境下での通気性を重視したウルトラライトで、実物を見ると手が込んだ作りになっていることが分かる。フロントパネルはストライプ状のメッシュ生地。背面はUPF50の紫外線防止効果を持つ。肩回りはビオレーサーお得意のエアロ系生地で袖口はカットオフ。裾はグリッパーが配されておりずれを防ぐが、そこも丁寧に全面メッシュになっている。
全体的に伸縮性が非常に高いため、着ると体にぴたりとフィットする。まさに第二の皮膚という感じ。前傾姿勢をとっても肩回りに突っ張り感がなく、エアロフォームにストレスがない。肩回りのカッティングをみると、前面・背面・サイドパネル・肩口パネルが非常に複雑に入り組んでいることが見て取れる。
生地の特性、その配置、伸縮しやすい方向性、パネルの形状、カッティング、その全てのコンビネーションの賜物だ。ビオレーサーのこのカッティングは他社に模倣されることも多いというが、それも納得のフィッティングである。
3万円台が当たり前となり、4万円に達するジャージも珍しくない今、ビオレーサーのハイエンドジャージが2万円台中盤で入手できるというのも嬉しい。
実力に華が加わった
ジャージと同様、ビブショーツも生地の上質感と伸縮性が印象的。太もも部分のハニカム状の生地は、おそらくかなり幅広い体形に柔らかくフィットする。筆者は肌が弱く裾のグリッパーでかぶれてしまうことも多いのだが、これは一日中着用してもダメージは皆無だった。
ヴェイパーパッドは座骨周辺のみ分厚くなっている独特の設計で、骨盤を立てて後ろ乗りをするライダーにとっては少々の慣れが必要だが、慣れればペダリングのしやすさと高い振動吸収性が得られる。
と、こうして機能の説明や性能のレポートをしたとしても、サイクルウエアはデザインで選ばれることが多い。フレームやホイールは空力や軽さや剛性など、機能・性能が決め手となる。しかしウエアはいくら生地の性能や通気性やカッティングをアピールしても、デザインがよくなければユーザーに選ばれない。見た目がよくなければハナから相手にされない世界だが、ただし見た目だけを飾っても、哲学や中身のないブランドは、ユーザーにその薄っぺらさを見抜かれて、そのうち淘汰されることになる。
芸能界やタレントの世界に近いかもしれない。とりあえずはプロポーションやルックスが重要で、イケメンだったりちょっと目を引く笑顔だったり一芸を持っていたりすれば、世間に認知はされる。ただしそれだけでは一流にはなれない。ファンは狂喜してくれない。
機能面では間違いのないビオレーサー。25SSコレクションで既製ウエアのデザインが一気によくなり、実力に華が加わった。カスタムオーダーの世界では押しも押されもせぬブランドだったビオレーサーが、既製ウエア市場でも一流になる一歩を踏み出したと言える。