サイクルウェア最大手BIORACERの「人・モノ・コトが紡ぐサイクリングの物語」

BIORACER

白戸太朗さんインタビュー(後編)/“3”というマジックナンバー

白戸太朗さんインタビュー(後編)/“3”というマジックナンバー

プロトライアスリート、ロードレースの実況者、トライアスロンショップの経営者、都議会議員など、さまざまな顔を持ち多方面で活躍されている白戸太朗さん。ビオレーサーファミリーでもある白戸さんに、トライアスロンの魅力、これまでの経歴、アスロニアを立ち上げた経緯、今後の展望などを聞くロングインタビュー。

アスロニア立ち上げの経緯

「あるとき、僕がトライアスロンを教えていたある経営者の方から、『白戸さん、1人でやってるといつまでたっても1人だよ。1かける1は1にしかならないんだ。そろそろ組織にしてちゃんとやった方がいいよ』というアドバイスをしていただいたんです。それならば、と2007年にトライアスロン普及のためのアスロニアという会社を立ち上げました」

アスロニアはトライアスロンショップというイメージがあるが、それだけではない。

「トライアスロンの入口となるショップ。トライアスロンのイロハを教えるスクール。トライアスリートの目標となる大会のプロデュース。この3点を主な業務としました。アスロニアの目的はトライアスロンの魅力を広め、トライアスリートを増やすこと。それにはショップだけでは足りないんです。最初は相談をしたり、ものを見て買える場所が必要。ものを買ったら、ノウハウを教えてもらわないと上手く、楽しくできません。スクールで勉強したって、最終的にトライアスロン大会という目的がなかったらモチベーションアップしない。ならば、その三段階を全部作ってあげればいいのでは?と」

スポーツを楽しむ上で必須なこの3ステップだが、その全てを担う会社は世界的にも珍しいという。

「入口から出口まで全てを作るって、スポーツでは当たり前に必要なこと。でも、大変だからそれぞれバラバラでやってるところがほとんどです。1つの会社で全部をやると言って始めたのは世界的にも珍しかったと思います。その分、大変な苦労もするんですが」

「それもあって、設立当初は我々が仕掛けたことがうまく実り、『仕事ができる人はトライアスロンをやる』という流れもできて、メディアも含めて大いに盛り上がりました。トライアスロンというスポーツが社会に広まり、我々がアスロニアを立ち上げた意味はあったと感じています」

しかし、現在はその勢いがやや陰っているという。原因はやはりコロナだ。

「コロナの少し前ぐらいから、トライアスロン離れというか、当初の勢いがなくなってしまったんですが、そのままコロナに突入。大会が全て中止になり、スクールもできなくなり、会社として非常に厳しくなった時期はありました。コロナが終わっても、まだコロナ前の状態に戻っているかというと、100%戻ってはいません」

「一方で、いい兆しもあります。このところ、トライアスロンの世界に新しい層が入ってきてくれているんです。これまでは、トライアスロンというと年齢層は40~50代がメインでしたが、コロナ以降、特にこの2年ぐらいの傾向として20代30代という若年層が入ってきている。新しい空気が流れ出したなというのが最近の傾向です」

トライアスロンの魅力

若年層も注目しはじめているというトライアスロンというスポーツ。白戸さんが考えるトライアスロンの魅力とは?

「トライアスロンって競技スポーツだけど、競技だけじゃないんですよ。これがすごく大事なところ。トライアスロンってオリンピックスポーツだし、プロもいるので、速い/遅いも当然重要なんですが、一般の人はタイムの良しあしだけでは図れないところがあります。海外では、『トライアスロンをやることで人生が楽しく、豊かになる』という価値感があります。それこそがトライアスロンをやる意味だと思うんです。タイムやスピードにしか価値観を置かないと、『速いやつが偉くて遅いやつはダメ』というすごくつまんないスポーツになってしまう」

これはトライアスロンだけではなく、全ての趣味スポーツに共通する問題点かもしれない。

「そうです。どうしても『速いか遅いか』とか、『勝たないと意味がない』とか、『アイアンマンやらなきゃダメだ』というところに走るきらいがあって、『より速く・より遠く・より強く』ということだけを求めるようになりがちです。マラソンでも自転車でもそうですが、そういう目的だけだと、速くならなくなった瞬間に面白くなくなっちゃうんですよ」

「自転車でも全く同じ。もちろん、誰かに勝って一番を取るのもいい。ヒルクライムでタイム出すのもいい。でも、自分の脚だけで一日走って、いい景色を見ることができればそれだけで楽しいんですよ。気持ちいい風を感じるだけでも素晴らしいんです。その楽しみを知っていれば、60歳になっても70歳になっても楽しみはいくらでも見出せます。でも競技シーンでは、そこがどこかになおざりになってしまって、ものすごく狭い世界になってしまいます」

「ところが、なかなかそういう部分はうまく伝わりきらないし、全体業界全体でもそっち(結果・数字・リザルトの追求)に行っちゃう。スポーツって競技の部分もあるので、どうしても速いか遅いかで全部メジャーメントされがちです。でも、それだけではつまらないし、トライアスロンはそれだけではないんです。トライアスロンの世界に飛び込むことで、その人の人生が豊かに、輝くようになっていく。それこそが、僕がトライアスロンを広めている理由なんです」

「トライアスロンをやっていると、その場、そのときしか見られない景色や風景、光景がいっぱいあるんですよ。この瞬間、泳いでいる僕だから見える景色。このときに自転車に乗ってるからこそ見える景色がいっぱいある。『これが生きてるってことなんじゃないの?』と」

「だからアスロニアは、エリート選手の強化にはそれほど力を入れてないんですよ。なぜかというと、我々はみんなにトライアスロンをやって人生を輝かせてほしいだけだから。競技は競技で素晴らしいし、僕もずっと競技をやってきましたが、オリンピックに何人行ったとか、そこにはあんまり興味がないんです」

トライアスロンは3倍遊べる

以上の“トライアスロンの魅力”は、他のスポーツにも共通していることかもしれない。しかし、“トライアスロンにしかない魅力”もある、と白戸さんは言う。

「トライアスロンには、スイム、バイク、ランと3つありますよね。練習でも大会でも、3つ全てを理想通りに仕上げられることなんかそうそうないわけです。さらに言えば、3つ全て得意という人もほとんどいない。トライアスロンは3つ全てを揃えなければいけない難しさがある反面、3つあるからこそ1つがダメでもカバーできることがあります。3つあるからうまくバランスを取ることができるのがトライアスロンなんです」

「それって人生そのものなんですよ。なにもかもが上手くいく人なんていません。いいことと悪いことを繰り返しながら、バランスを取りながら人は生きていく。3種目あるトライアスロンはそれと同じなんですよ」

「『トライアスロンは3種目もやらなきゃいけないから大変そうで……』とよく言われるんですが、逆なんです。自転車もマラソンも、やることが1種類ですよね。でもトライアスロンは3つもできるんです。遊び方のカードを3枚も持ってるんです。だから『3つやらなきゃいけない』んじゃなくて、『3倍遊べる』んですよ」

サードプレイスとしての魅力

また、トライアスロン界のコミュニティにも魅力がある。

「そうは言っても、実際は3つやるのは大変だと思います。それがトライアスロンを始めるハードルになってますね。トライアスリートは、そのハードルをエイヤッと越えてきた人たちです。結果として、トライアストンの世界には、思い切りがある人、好奇心旺盛な人、バイタリティ豊な人、エネルギーとパッションに満ち溢れている人が集まります。そういうコミュニティにいると、刺激を受けて、また自分も『前を向いて頑張ろう』と思えるんです」

「人って3つの世界を持っていなければいけない、とよく言われますね。1つめは家庭。2つめは仕事ですね。もう1つ、人間には3つめの世界が必要です。サードプレイスとよく言われますが、趣味や没頭できるものの世界です。サードプレイスを持っていると、仕事や家庭で上手くいかないときにいい意味での逃げ場になりますし、『定年退職したらやることがなくて困った』なんてこともありません。しかも、サードプレイスって、仕事やお金には関係ない価値観を共有できる仲間がいることが多い。サードプレイスを持っている人は強いんです。トライアスロンのコミュニティって、すごくサードプレイスに向いてるんです」

この度、ビオレーサーでアスロニアのオリジナルデザインのトライアスロンウエアを作成し販売を行う。そのデザインには、白戸さんが考える「トライアスロンの魅力」を盛り込んだという。

「トライアスロンってスイム、バイク、ランの3つから成り立っています。人生も、家庭、仕事、趣味(サードプレイス)という3つから成ります。スポーツにおいては、心技体と言われますが、身体能力、精神力、技術の3つが必要と言われます。この『3つ』というのがキーワードになっているのかなと。そんな3本の糸が絡み合って1本になっていくというトライアスロンの世界観をデザインで表現したいと考えました。これはアスロニアのオリジナルデザインですが、アスロニアとはかかわりのない方にもぜひ着ていただきたいと思います」

アスロニアのオリジナルデザイン(画像はデザイン検討中のものであり、変更される可能性があります)

 

都議会議員を経て、次の10年はーー

2017年、東京都議会議員選挙に立候補して当選、二期八年を務めあげた。

「もちろん最初は政治家なんて考えてもいませんでしたが、ご縁をいただき、今までの経験を社会に還元できるかもしれないなと思い、二期八年、都議会議員をやらせていただきました。東京都のスポーツ関係の仕事に多く関わる事ができたので、自分がやった価値はあったかなと」

30代では、スポーツ選手としてだけでなく、実況を通してスポーツの魅力を伝えた。
40歳になったとき、トライアスロンの楽しさを広めるために会社を起こした。
50歳では、これまでの自分の経験を社会に還元したいと、都議会議員になった。

「あと1年で僕は60になるので、60歳代のテーマを決めなきゃいけないんです。今、模索しているところですが、『スポーツの力で社会を良くしていく』が自分のライフテーマだと思っているので、スポーツで世の中を元気にしていくことを軸にしたいと考えています」

競技者としてトライアスロンの世界レベルに達した。
実況・解説者、指導者としてスポーツの楽しさ・面白さを伝えた。
経営者・政治家として「スポーツのある人生」を人々に提供した。

白戸さんの人生も、3つの軸から成っているのかもしれない。バイタリティ溢れる白戸さんなら、その3本の線を紡いで素晴らしい1本の物語にしてくれるに違いない。

BIORACER公式通販サイトCaLORS

PAGE TOP