サイクルウェア最大手BIORACERの「人・モノ・コトが紡ぐサイクリングの物語」

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ビオレーサー・ウインタージャケット&ビブタイツインプレ

ビオレーサー・ウインタージャケット&ビブタイツインプレ

冬用アイテムのインプレッション、第3段はウインタージャケットとビブタイツ2種に、ウインターソックスを加えた計4商品。

テンペストプロテクトジャケット

まずは-10℃から0℃に対応するテンペストプロテクトジャケットから。

空力を重視したタイトフィットなエアロスーツのイメージが強いビオレーサーだが、このジャケットは肩~腕周りに比較的余裕がある。冬用ウエアではこれが正解だ。冬用のウエアは、防風性・保温性を確保するため、どうしても分厚くなり、夏用の薄手の生地に比べると伸縮性は劣る。

そのような素材でタイトにしすぎると、ライディングフォームをとること自体に体力を使う。ライド時は肩甲骨を下げ、肩を前方に引き出すことが求められるが、分厚い生地でタイトにすると、ライドフォームを取っている間中、生地のテンションに負けないように肩回りの筋力を発揮し続けなければならない。

どうしても生地が分厚くなるウインタージャケットでは、このテンペストプロテクトジャケットのように余裕をもたせて「暖かさ」と「ライディングフォームの取りやすさ」を両立させるのが正解だ。モデル着用時の見栄えを重視してタイトにした結果、肩回りが窮屈でライディングフォームを取ることにストレスを感じるウエアも多いなか、ビオレーサーは分かっている仕立てになっている。

さすがに-10℃では試せていないが、0℃を余裕で下回る環境で使ってみたところ、ウインタージャケットとして暖かさはトップレベルにあった。生地自体の防風性・保温性が非常に高いのだろう。多少の雪でも体は冷えなかった。この日本では、これ一枚持っておけば冬は乗り切れると思う。

フロントパネルにはジッパー付きのフロントポケットが一つ。背面にはジッパー付きポケットが一つ、通常のバックポケットが一つ。胸部分はリフレクターになっており、暗くなるのが早い冬のライドでの視認性を向上させる。

 

テンペストフルプロテクトピクセルビブタイツ

テンペストプロテクトジャケットと同じく-10℃から0℃まで対応する、ビオレーサーのラインナップの中で最も温かいビブタイツが、テンペストフルプロテクトピクセルビブタイツ。冬用ビブタイツの要は、他のウインターウエア同様に動きやすさと防寒性をいかに両立させるかにあるのだが、これはそこにかなり手間をかけている。

実物を見ると、パネル毎に細かく生地を使い分けている。まず、前面の生地は腰から足首まで全て二重になっている。外側には防風性・防水性に優れた素材を用いており、相当な低温環境を想定していることが伺える。

一方、風にさらされない背面は動きやすさを重視してか一枚の伸縮性に優れた生地から成る。屈曲する膝部分には伸縮性のある素材を多めに用い、ふくらはぎ部分には全面にリフレクター生地を配して、後方の車からの非視認性を上げる。下肢はペダリング中最も激しく上下する部分なので、ここにリフレクターを配置すれば視認性向上に最も効果的だ。

実際に着用すると、まずその温かさに驚く。寒い日の早朝(2~3℃)でも、ほとんど寒さを感じないほどだ。そこまで温かいのに、動きやすさはさほど犠牲になっておらず、ペダリングにストレスはない。

ウェーブパッドは一見厚めで、フィット感より快適性重視かと思いきや、荷重が集中する座骨周辺を保護してくれて、そこ以外は薄手になっているので股に程よくフィットする。強度が落ちがちな冬にはこれくらいがいいかもしれない。形状的に骨盤を寝かせ気味にしたフォームに合うパッドだと感じた。

雪上ライドでも使ってみたが、防水性と遮熱性が非常に高く、零下で雪にまみれても体の芯まで冷えきることはなかった。「今日はちょっと寒いから……」が言い訳に使えなくなる、そんなビブである。

手の込んだカッティングと生地の使い分け。ふくらはぎ部分は全面リフレクターで夜間の視認性を上げる。ハイエンドラインに使われるビオレーサー独自開発のウェーブパッドが採用される。

 

ICONテンペストグラベルタイツ

ビオレーサーとして初となるグラベル用ウエアがICONテンペストグラベルタイツ。携行品が多くなりがちなグラベルライドのために背面と両サイドに計4つのメッシュポケットを設けた、いわゆるカーゴビブだが、ただポケットを縫い付けただけではない。

ベルギーの厳しい石畳の上でテストされたウェーブパッドはハードなグラベルライドにも最適だといえるし、下肢部分には擦れと汚れに強い素材が使われている。グラベルライドでは、草木をかき分ける藪漕ぎや、バイクをかついで岩を超えるなどの楽しいイベントも発生したりするので、ウエアが傷みやすい。これは地味に嬉しい配慮だ。

裏地は起毛で肌触りがいい。ペダリング時に大きく伸び縮みする股部分は伸縮性の高い素材で、太ももから下は防風性に優れた素材で構成されているので、スムーズなペダリングと温かさを上手く両立している。本国HPには対応温度帯として0~10度とあるが、少なくとも5度ちょい下まではこれで十分走れる。

夏は草木がトレイルを覆って走りにくくなり、虫も多くなる。日本のグラベルのベストシーズンは春もしくは秋だが、こんなウエアがあるなら冬だって室内に閉じ籠る必要はない。

腰部分と太もも両サイドに配されたメッシュポケット。下肢部分はグラベルライドでも傷みにくい素材になっている。

 

テンペストソックス

最後はテンペストソックス。足先の防寒具としてはシューズカバーが主流だが、防寒用ソックスも効果的だ。

風が当たる足の甲と足首の前側を防風・防水生地であるテンペスト素材とし、伸縮性が必要とされるかかと~背面には伸縮性に富む生地を使い、「普通に使える防寒用ソックス」を目指している。

 

この種の防寒用ソックスは分厚くなってしまうものも多いが、これはさほど厚くなく、生地に伸縮性があるため足に程よくフィットするため、普通のソックスとほぼ同じ感覚で使える。写真から分かるように縫い目があり、シューズを履くとつま先に当たるが、思ったほどは気にならない。5℃の気温のなか、片方は普通のソックス、もう片方にこのテンペストソックスを履いて走ってみると、無視できない違いがあった。保温性はさほど高くはないが、風を遮ってくれるので、冷風の中を走ってもつま先が冷えにくい。通気性も確保されているようで、汗をかいても蒸れにくい。グローブやシューズカバーに比べてメジャーではない防寒用ソックスだが、この出来なら冬用アイテムとしてかなり有効だ。

 

かつて、ロード乗りにとって冬はオフシーズンで、バイクをオーバーホールに出すいい機会だった。しかし昨今はウエアの進化によって冬でも走れるようになったため、明確なオフシーズンがなくなったと言われる。確かに、このようなウエアを着ると、5℃程度の寒さでは全く問題なく走れるようになったことを実感する。冷たく澄んだ空気をバイクの上で胸いっぱいに吸い込んだり、白い息を吐きながら冬山のヒルクライムを楽しんだり、雪の上で滑ったり転んだり……そんな遊びをしやすくなった、いい時代だ。

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